第117章

稲垣栄作が現地に着いたのは、午後六時半だった。

稲垣おばあさんは店の入り口にあるベンチに座り、上村舞が買ってきたホットドッグを食べていた。稲垣栄作が車から降りるのを見ると、「これ、おいしいわ。お店でも出したらどう?」と言った。

稲垣栄作は呆れつつも、思わず笑みがこぼれた。

彼は手で車のドアを閉め、稲垣おばあさんの横にしゃがみ込み、低い声で諭すように話した。「病院から抜け出して、どれだけの医療スタッフがあなたを探しているか分かってる?なのに、まるで子供みたいに路上でホットドッグ食べてるなんて」

彼は稲垣おばあさんからホットドッグを取り上げようとした。

稲垣おばあさんは不満げに、すかさ...

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